インターン生の落とし穴
インターン生:「万次郎さん、今日は私の会社のことで相談に来たんです」
「私は日系のコールセンターでインターン生として入社し、
試用期間が6ヶ月の雇用契約を交わされているんです。
雇用契約って普通は3ヶ月くらいじゃないんですか?
友人が言うには、フィリピンでは6ヶ月が普通だと
いうことらしいんですが、本当なんですか?」
万次郎:「う~む、君は、インターン生として承知で契約書をかわしたのかね?」
インターン生:「はい、最初はインターンでも、真面目に働けば直ぐに正社員に
なれると思ってたんで・・・」
万次郎:「日本では試用期間の制限はないんじゃが、君の言うとおり、通常3ヶ
月の会社が一般的じゃ」
「しかし、フィリピンでは、労働法で6ヶ月の試用期間を超えることは
違法になるため、逆に殆どのフィリピン人は6ヶ月の試用期間を設け
られておるんじゃよ」
「君がフィリピン人としての扱いか、日本人としての扱いかは、なんと
も理解ができないんじゃが、普通の日系の会社であれば、日本人並に
3ヶ月位の雇用契約が一般的じゃろうな」
インターン生:「それに、給料も出ないし、ビザも観光ビザを自分で更新しない
といけないんです。これって、インターン生ってみんなそうな
んですか?」
万次郎:「それは、会社によって、皆違うんじゃが、インターンといっても、
語学の授業を無償で受けたり、宿舎を無償で提供されておるんじゃろ
?2年半ほど前に日系の会社が不法就労で60人もの日本人が逮捕さ
れた事件を知っておるかの?」
「この時も、同じように研修生としての扱いで宿舎と語学レッスンを
無料で提供されることを条件に1日6時間の就労をOJTとして偽って
就労させていたんじゃ」
「フィリピンの法律では、給与を支給していないから就労には値しない
とかではなく、現に机に座って業務をしているだけで就労とみなされ
るのじゃよ。殆どが、フィリピン人による通報じゃから免れようがな
いんじゃ」
「だから、事件後は、SWP(報酬の伴わない短期就労ビザ)などを会社
が取得し、偽装を装ってきたんじゃが、たとえ、給料は支払ってなく
ても語学レッスンや宿舎を提供されるという現物支給は、先進国では
就労の対価とみなすのが常識なんじゃがのう・・」
インターン生:「それじゃ、今の会社もそういうブラック企業ってことですね」
万次郎:「最低でもSWPの就労ビザを持ってないと、万が一DOLE(労働雇用
省)やNBI(国家捜査局)の手入れがあったら不法就労で逮捕、国外
追放、挙句の果ては、ブラックリストに載って最低10年は国外への
出入国禁止になるんじゃ」
「2年半前の事件は殆どの日系企業が知るところじゃから、今でもそん
な会社がある事自体が信じられんのじゃが、おそらくは、人件費節約
のために承知でやっているんじゃな・・・」
インターン生:「えー、そんな大変なことになっちゃうんですか?」
「わかりました。ビザを取ってくれないんだったら、すぐに会社
を辞めます」
万次郎:「その方が賢明じゃ、気をつけてな」